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【100日間生きたワニ】の感想

 たぶん日本で一番有名なワニが今度はスクリーンの中で死にました。

 

 

 「100ワニの映画観に行った」と言ったら「こんな目に見える地雷を自分から踏みに行くやついるのか」と思う人もいるでしょう。

 

 別に私は100ワニが好きなわけでも、だからといって特段嫌いなわけでもありません。

 

 ただ、映画の公開が近付くにつれて『試写会に行った人が酷評!』とか『座席が空きまくり!』みたいな記事ばかり流れてきて

 なんとなく「こいつら全員観もせずに批判してるんだろうな」と思ったら無性に腹が立ったので、私はちゃんと観てこようと思いました。

 

 

 今回こうして感想をまとめるにあたって「もしかしてツイッターで公開された100日間以外もアニメ化されているのかな」と思い単行本を購入し描きおろし部分を確認しましたが、とくにそんなことはなかったので映画を観るにあたっての前知識はツイッターに公開されている100日分だけで大丈夫です。

 

 

〇本編について

 

 『100日間』という時間の流れが何よりも重要な今作ですが、かなり省略されているので100日経った感じがしませんでした。全然関係ないけどアニメの91daysも今何日目だよって思いながら見てました。

 5日目と10日目、14日目と36日目と3日目がひとつにまとめられているなど、映画として1本の流れを作るために省略されている時系列も多いため2週間くらいで死んだワニに見えないこともないです。

 このあたりはおそらく、観る人が原作を知ってるという前提で作っているのでしょう。

 

・冒頭に100日目を持ってくるのがよかった。

 開幕でワニの死を描写することで、そこに至るまでの100日間に価値を与えている。BGM、満開の桜、ワニの到着を待つ皆、その空気感で少し感動しそうになりました。

 原作では信号無視したせいでワニが死ぬ原因になり読者からのヘイトを集めたヒヨコですが、映画では強風に飛ばされて道路に投げ出されたことに改変されているため、ヘイトが多少は薄れたのではないでしょうか。こういう丁寧なところでストレスを感じないように配慮されているのはグッド。

 

・ネズミってこんなに陽気だったんだ

 100日目の描写が終わると入院したネズミのお見舞いシーンに繋がります。

 ここで落ち込んだネズミに、ワニが「6時のマネ」をして励ますわけですがそれを見たネズミは爆笑したのちに「5時は?」と無茶ぶりをします。リズミカルに歌いながら5時のマネを促しますが、ワニは「5時は流石に無理!」と断ります。

 原作では91日目にワニが5時のマネをする描写がありましたが、映画では最期までネズミに5時のマネを見せることは叶いませんでした。

 この時のリズミカルに無茶ぶりをする様子や、退院後に「回復力!」と繰り返し叫びワニにスルーされている様子、大晦日で「大晦日トルネードキック!」と回し蹴りを繰り出している様子から『ネズミってこんなにウザ絡みする奴だったのか』と感じました。

 映画を観た後に原作を読み返すと、上記の「回復力!」や「大晦日トルネードキック!」の描写は無く映画オリジナルだったことがわかりました。(原作に「クリスマスイブキック」というセリフはあった)

 あえて原作よりも陽気なキャラにしたことで、映画後半のネズミとのギャップを産もうとしたのでしょうか。

 

・絵が可愛い

 映画を観る前に、ネット上で『紙芝居』『絵が動かない』『300枚くらいしかない』という評価を見ていたためさぞ止め絵なんだろうと思いましたが、実際に観てみると「そんなに動いてないか?」という感想でした。

 劇場版ということを加味すれば、確かに絵に動きはないかもしれません。でも、そもそも100ワニに動きって必要ですか???

 膨大な枚数でヌルヌル動くワニ、気持ち悪くないですか???

 

 「おーい、見とけし」と目を細めて拗ねるネズミが可愛かったです。 

 センパイやイヌも大人の女性らしい魅力があって良かった。

 

・2度目の100日目 

時間は流れて100日目に進むわけですが、ここで冒頭と全く同じ映像が流れます。

 「100日目は省略できないから仕方ないけれどなんで60分しかない映画で全く同じ映像を流すの!」ってなりました。

 ちなみにここまで、30分です。

 

・100日目の100日後

 映画の前半30分はワニが死ぬまでの100日間、そして後半30分はワニが死んでから100日後の世界を描いています。

 それは我々がワニに熱狂していたあの頃に見たかったもの。

 

 ネズミの心象を表すかのような土砂降り。

 ワニと2人でよく通っていたラーメン屋は潰れ、大会に出るほど熱狂したゲームはコントローラーに埃がかぶるほど手を付けなくなってしまった。

 皆でお花見をするほど仲の良かった友人たちとも疎遠になり、たった1人の親友の死によって世界は大きく変わってしまった。

 

 友人から映画に誘われるセンパイ。その映画はワニと観に行く約束をしたドクターアニマル2。「約束があるの」と友人の誘いを断るシーンはセンパイの悲しみ、優しさを現している今作屈指の名シーンだと思います。

 

 部下の失敗に対して「死んでもなんとかしろ」と悪態をつく上司の姿を見て、何か思うところがありそうなモグラ。これは単行本の描きおろし漫画に似たような場面がありましたね。

 

 そんな重い空気の中、映画オリジナルキャラクターであるカエルが登場します。

 カエルは最近引っ越してきたため、バイトと友達を探しているお調子者。

 こいつが本当に不快。

 距離感バグってるタイプのコミュ障。

 相手が露骨に自分を避けているのに、それに気付かず何度もしつこく誘うタイプ。

 あー居る居るこういう奴。というリアルさがまた嫌。

 

 ネズミがカエルに対して「なんだよあいつ」と文句を言っていたため、あえてそういう描き方をしているようで安心しました。もし制作側が「こいつは好かれるぞ!」と思って描いていたらキレてた。

 

 そんなカエルも少しずつ「自分なんかノリ違いますかね」と寂しそうな背中で呟いたり、失恋と同時に過去のいろいろを思い出し涙が止まらなくなるシーンが挟まれ多少は不快感が緩和されました。でも不快。

 

・受け継がれるワニの精神

 悲しみに暮れるカエルを見て、その姿に自分を重ねたネズミはカエルを励まそうとします。励まそうとミカンを差し出し、6時のマネをするその姿はあの日ネズミを励ましたワニと全く同じ。

 励ましながらもワニのことを思い出し、同時にワニの死をやっと受け入れることができたのか涙が止まらなくなるネズミ。

 ワニの死から100日が経ち、やっとネズミは涙を流すことができた。

 

 もう永遠につかない既読通知。

 ワニが好きで使っていたスタンプを皆で使っている。

 世界は変わってしまったけれど、終わってなんかいない。

 ワニが居たその居場所を無くしてはならない。

 ワニやモグラのように将来やりたいことを見つけられなかったネズミにも、やりたいことができた。

 

 この物語はネズミが立ち直り、1歩進みだすまでの物語。

 

 

〇まとめ

 この映画、たぶんネズミが主人公です。

 前半のワニにウザ絡みしてたネズミと、後半のクッソ暗いネズミのギャップは彼の悲しみを上手く表していたと思います。

 もしもワニが炎上せず、優しい目で世間から見てもらうことができたらワニとネズミのエモい二次創作イラストがいっぱい流れてきただろうなあと思うと悔しい。

 

 後半30分は映画オリジナルストーリーで本編のその後を描いているのでそこの部分に価値があると判断したならば映画を観て損はないと思います。

 私自身の感想としては「1000円なら観ても損はない」ってな感じです。

 1900円は高いんじゃないかなぁ……

 

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