【100日間生きたワニ】の感想
たぶん日本で一番有名なワニが今度はスクリーンの中で死にました。
「100ワニの映画観に行った」と言ったら「こんな目に見える地雷を自分から踏みに行くやついるのか」と思う人もいるでしょう。
別に私は100ワニが好きなわけでも、だからといって特段嫌いなわけでもありません。
ただ、映画の公開が近付くにつれて『試写会に行った人が酷評!』とか『座席が空きまくり!』みたいな記事ばかり流れてきて
なんとなく「こいつら全員観もせずに批判してるんだろうな」と思ったら無性に腹が立ったので、私はちゃんと観てこようと思いました。
今回こうして感想をまとめるにあたって「もしかしてツイッターで公開された100日間以外もアニメ化されているのかな」と思い単行本を購入し描きおろし部分を確認しましたが、とくにそんなことはなかったので映画を観るにあたっての前知識はツイッターに公開されている100日分だけで大丈夫です。
〇本編について
『100日間』という時間の流れが何よりも重要な今作ですが、かなり省略されているので100日経った感じがしませんでした。全然関係ないけどアニメの91daysも今何日目だよって思いながら見てました。
5日目と10日目、14日目と36日目と3日目がひとつにまとめられているなど、映画として1本の流れを作るために省略されている時系列も多いため2週間くらいで死んだワニに見えないこともないです。
このあたりはおそらく、観る人が原作を知ってるという前提で作っているのでしょう。
・冒頭に100日目を持ってくるのがよかった。
開幕でワニの死を描写することで、そこに至るまでの100日間に価値を与えている。BGM、満開の桜、ワニの到着を待つ皆、その空気感で少し感動しそうになりました。
原作では信号無視したせいでワニが死ぬ原因になり読者からのヘイトを集めたヒヨコですが、映画では強風に飛ばされて道路に投げ出されたことに改変されているため、ヘイトが多少は薄れたのではないでしょうか。こういう丁寧なところでストレスを感じないように配慮されているのはグッド。
・ネズミってこんなに陽気だったんだ
100日目の描写が終わると入院したネズミのお見舞いシーンに繋がります。
ここで落ち込んだネズミに、ワニが「6時のマネ」をして励ますわけですがそれを見たネズミは爆笑したのちに「5時は?」と無茶ぶりをします。リズミカルに歌いながら5時のマネを促しますが、ワニは「5時は流石に無理!」と断ります。
原作では91日目にワニが5時のマネをする描写がありましたが、映画では最期までネズミに5時のマネを見せることは叶いませんでした。
この時のリズミカルに無茶ぶりをする様子や、退院後に「回復力!」と繰り返し叫びワニにスルーされている様子、大晦日で「大晦日トルネードキック!」と回し蹴りを繰り出している様子から『ネズミってこんなにウザ絡みする奴だったのか』と感じました。
映画を観た後に原作を読み返すと、上記の「回復力!」や「大晦日トルネードキック!」の描写は無く映画オリジナルだったことがわかりました。(原作に「クリスマスイブキック」というセリフはあった)
あえて原作よりも陽気なキャラにしたことで、映画後半のネズミとのギャップを産もうとしたのでしょうか。
・絵が可愛い
映画を観る前に、ネット上で『紙芝居』『絵が動かない』『300枚くらいしかない』という評価を見ていたためさぞ止め絵なんだろうと思いましたが、実際に観てみると「そんなに動いてないか?」という感想でした。
劇場版ということを加味すれば、確かに絵に動きはないかもしれません。でも、そもそも100ワニに動きって必要ですか???
膨大な枚数でヌルヌル動くワニ、気持ち悪くないですか???
「おーい、見とけし」と目を細めて拗ねるネズミが可愛かったです。
センパイやイヌも大人の女性らしい魅力があって良かった。
・2度目の100日目
時間は流れて100日目に進むわけですが、ここで冒頭と全く同じ映像が流れます。
「100日目は省略できないから仕方ないけれどなんで60分しかない映画で全く同じ映像を流すの!」ってなりました。
ちなみにここまで、30分です。
・100日目の100日後
映画の前半30分はワニが死ぬまでの100日間、そして後半30分はワニが死んでから100日後の世界を描いています。
それは我々がワニに熱狂していたあの頃に見たかったもの。
ネズミの心象を表すかのような土砂降り。
ワニと2人でよく通っていたラーメン屋は潰れ、大会に出るほど熱狂したゲームはコントローラーに埃がかぶるほど手を付けなくなってしまった。
皆でお花見をするほど仲の良かった友人たちとも疎遠になり、たった1人の親友の死によって世界は大きく変わってしまった。
友人から映画に誘われるセンパイ。その映画はワニと観に行く約束をしたドクターアニマル2。「約束があるの」と友人の誘いを断るシーンはセンパイの悲しみ、優しさを現している今作屈指の名シーンだと思います。
部下の失敗に対して「死んでもなんとかしろ」と悪態をつく上司の姿を見て、何か思うところがありそうなモグラ。これは単行本の描きおろし漫画に似たような場面がありましたね。
そんな重い空気の中、映画オリジナルキャラクターであるカエルが登場します。
カエルは最近引っ越してきたため、バイトと友達を探しているお調子者。
こいつが本当に不快。
距離感バグってるタイプのコミュ障。
相手が露骨に自分を避けているのに、それに気付かず何度もしつこく誘うタイプ。
あー居る居るこういう奴。というリアルさがまた嫌。
ネズミがカエルに対して「なんだよあいつ」と文句を言っていたため、あえてそういう描き方をしているようで安心しました。もし制作側が「こいつは好かれるぞ!」と思って描いていたらキレてた。
そんなカエルも少しずつ「自分なんかノリ違いますかね」と寂しそうな背中で呟いたり、失恋と同時に過去のいろいろを思い出し涙が止まらなくなるシーンが挟まれ多少は不快感が緩和されました。でも不快。
・受け継がれるワニの精神
悲しみに暮れるカエルを見て、その姿に自分を重ねたネズミはカエルを励まそうとします。励まそうとミカンを差し出し、6時のマネをするその姿はあの日ネズミを励ましたワニと全く同じ。
励ましながらもワニのことを思い出し、同時にワニの死をやっと受け入れることができたのか涙が止まらなくなるネズミ。
ワニの死から100日が経ち、やっとネズミは涙を流すことができた。
もう永遠につかない既読通知。
ワニが好きで使っていたスタンプを皆で使っている。
世界は変わってしまったけれど、終わってなんかいない。
ワニが居たその居場所を無くしてはならない。
ワニやモグラのように将来やりたいことを見つけられなかったネズミにも、やりたいことができた。
この物語はネズミが立ち直り、1歩進みだすまでの物語。
〇まとめ
この映画、たぶんネズミが主人公です。
前半のワニにウザ絡みしてたネズミと、後半のクッソ暗いネズミのギャップは彼の悲しみを上手く表していたと思います。
もしもワニが炎上せず、優しい目で世間から見てもらうことができたらワニとネズミのエモい二次創作イラストがいっぱい流れてきただろうなあと思うと悔しい。
後半30分は映画オリジナルストーリーで本編のその後を描いているのでそこの部分に価値があると判断したならば映画を観て損はないと思います。
私自身の感想としては「1000円なら観ても損はない」ってな感じです。
1900円は高いんじゃないかなぁ……
「Life Like a Live!」の一言感想
皆さん、前夜祭から数えると4日間にも亘る世界最大のバーチャルアイドルフェス『Life Like a Live!』、通称えるすりーお疲れさまでした。
舞台に上がったアイドルの皆さんはもちろん、今回は残念ながら舞台に上がることが出来なかった皆さん、4日間応援を続けたファンの皆さんもお疲れ様です。
これだけすばらしいライブを見せられてしまうと、今後これ以上の興奮を味わうことが出来るのだろうかと不安になりますが、バーチャルアイドル(以下Vアイドル)の彼女たちは日々精進を続けている“プロ”です。
次に見る彼女たちは今日の彼女たちよりも大きな存在となっていることでしょう。
当初はえのぐとリブドル!目当てで見ていたえるすりーですが、見終わった今はジェムカンさんまりなす(仮)さんパレプロさんはもちろん、天使リリエルさんやHACHIさん、アイドル部やユイしあ……
えるすりーで好きになった人を羅列しようと思いましたが、全員になりますね。
出演者を見てください、それ全員好きです。
そして、私が今回語りたいのは今後現れるVアイドルについてです。
今回えるすりーに出演したVアイドル達は現時点で業界の最前線を走っている子たちでしょう。
ですが、アイドルという世界は後からスタートした子が先にスタートした子を追い抜かしても全くおかしくない世界です。
極端な話、明日デビューする子がその日のうちに頂点に君臨したっておかしくない。そういう世界です。
えるすりーを観覧していた皆さんはその存在を目に焼き付けたでしょう。
登場してものの数秒、たった一声で視聴者を虜にしたそのハイトーンな歌声。
その独特な世界観。おそらく双子だろうと思うが、主従のようにも見える、人間にも見えるし吸血鬼のようにも見える彼女たちを。
LiLYPSE
我々はその名前を今日、このえるすりー最終日まで知りませんでした。
それもそのはず。
LiLYPSEという名前は出演者として記載されておらず、全くのサプライズ出演だったからです。
それでは、もともとのLiLYPSEファンの反応はどうだったのでしょうか。
サプライズ出演ということは、LiLYPSEを目当てにチケットを購入した人が居ないということです。
サプライズで出演するのを知っていればチケットを買ったのに! と怒るファンもいるかもしれません。
ですが、そうはなりませんでした。
“もともとのファン”なんてものは存在しなかったからです。
無名。どころか、今日その瞬間に初お披露目。
登場した瞬間、誰しもが例外なく「誰?」と思ったことでしょう。
そして始まる歌唱。
その歌声を聴いたとき、我々は思いました。
「なぜこの子たちがノーマークだったのか」
これほどの歌声を持つならば、多かれ少なかれバーチャル沼に沈んでいる我々に全く情報が流れてきていないわけがない。
そう思ったはずです。
調べてみるとあら不思議。
情報が皆無なのです。
ツイッターを漁っても、ググっても、何の情報もありゃしない。
公式のツイッターも存在しない。
そこで初めて我々は『LiLYPSEが今日初お披露目』だと知ることになります。
なぜそこまで気付くことが出来なかったか。
それは、LiLYPSEが昨日まで存在していなかったとはまるで思わせないクオリティの高さによるものでしょう。
正直、私はもう完全にLiLYPSEの虜でございます。
この歌声を永遠に聴いていたい。
彼女たちの性格を知りたい。
彼女たちのこれからを共に見ていきたい。
強くそう思いました。
彼女たち、LiLYPSEは大きく躍進するでしょう。
えるすりーという世界最大のVアイドルフェスで初お披露目という話題性。
そして既に決定しているTIFへの出演。
これらは確実にLiLYPSEという存在をより強固なものとしていきます。
だからといって、黙って足踏みをしているような軟弱なアイドルはここにはいません。
新しいVアイドルが出現したならば、私たちはもっともっとその先へ走っていこう。
そんな意志を持つ彼女たちだからこそ私は好きで、推して、応援しているのです。
やがては後からスタートしたVアイドルに追い抜かれる日がくるかもしれません。
それでも切磋琢磨し、抜きつ抜かれつVアイドルという業界全体を振興してくれる。
そんな彼女たちへの信頼と、彼女たちをこれからも見守っていきたいという関心はまだまだ色あせることはないのでしょう。
映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者
久々の更新となりました。
コロナの影響と言っても違和感がない期間更新が滞っていたようで我ながら驚愕。
さて、今回は映画クレヨンしんちゃんの感想となります。
ネタバレもあります。注意。
クレヨンしんちゃんの映画を観に行ったのは久々……いや、初めてかもしれません。
そんな私が今年観に行った最大の理由は京極尚彦監督の名前に釣られたという点が大きいですね。私はプリズムの煌めきに脳を焼かれた人間なので。
「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」の感想はただ一言、ここ数年で一番面白かった。
VR空間に絵を描くマサオくんのシーンから始まったり、しんのすけがYoutuberの話をしていたり、授業がタブレットだったりかなり現代的になっていて驚きました。情報収集のためにSNSを活用していたりね。
敵サイドにも味方サイドにも映画オリジナルキャラが多いのに、邪魔なキャラが居ないのがとても良かったです。
今までだったら敵サイドとして出てきたキャラクターはしんのすけ達との戦闘が描かれ、消化されていきます。
でも今回は最初から最後まで王宮にいるだけで一切しんのすけ達と関わらない敵サイドのキャラクターが数人いるなど、存在しているけれど関わって来ない感が世界観を上手く広げていました。
そんな面白かった今作なのですが、今回は私が特に良かったと思う3点についてお話ししましょう。
・姫が可愛い
・真ヒロイン・ニセななこ
・しんのすけの心情
まずは姫の可愛さから。
姫とは今回の敵が守ろうとしている国《ラクガキングダム》の姫です。
捕らわれそうになっても国の未来のため1人で走り出すアクティブさ。
大人のおっさん1人をぶん投げるパワフルさ。
冒頭部分から中盤の間は捕らわれているので中々登場しませんが、中盤以降もう1人の映画オリジナルキャラユウマ君と一緒に、しんのすけを探すため地上に降りてくるので出番が増えます。
この姫がとにかくかわいい。
表情がかわいい。
ムッとしていても、笑っていても、かわいい。
動きもかわいい。
特に終盤歌いながら塀にラクガキをするシーンの姫は動きも表情もかわいいが過ぎる。
今回1番可愛かった姫、そんな姫を差し置いて今作のヒロインとして存在しているのがしんのすけが描いたななこおねいさんの絵が実体化した、ニセななこです。
ニセななこは「しんちゃん、すきよ」しか喋りませんし、本物のななことは似ても似つかぬ顔をしています。そんなニセななこがどうしてヒロインかというと、
めちゃくちゃやさしい
めちゃくちゃかっこいい
めちゃくちゃかわいい
に尽きます。
始めは、描いたしんのすけもこんなのななこおねいさんではないと逃げまどいますが、身体を張ってしんのすけを助けたり、先に段差を登ってしんのすけ達を引っ張ったり、ニセななこが居なければ超えられなかった壁が沢山ありました。
表情もほとんど変わりませんが、しんのすけに木の実を貰った際には笑顔を見せます。
そんなニセななこの最大の見せ場はやはり最期のシーンでしょう。
しんのすけが描いて、実体化した仲間たちはもともと絵なので水に塗れると溶けて消えてしまいます。この設定があるだけでもう色々予想してしまうでしょう。
物語終盤、最終決戦の最中に雨が降り始めます。
屋上に駆けだしていくしんのすけ、追いかけようとするも雨に濡れれば消えてしまうため屋根のある場所から進めないニセななこ。
そんな中、敵の罠によって窮地に陥るしんのすけ。
その姿を見たニセななこは考えるよりも先に走りだしていた。
ここの、ニセななこが走り出すシーンも予想出来るんですよ。絶対助けに行くんだろうなって。
なんなら予告映像で見たなこのシーンって。
予想通りの展開なのにこんなに感動できるのかって感じですよここに関しては。
溶けながらも、溶けた自分の身体を投げてしんのすけを助けるシーンは本当にクレしん映画史に残る名シーン。
そして、しんのすけの心情。
前述のとおりしんのすけの目の前でニセななこは消えてしまいました。
助けてくれたお礼も伝えられないまま。
その後、しんのすけは涙一つ流さずに戦いを続けます。
先ほどまで「助けてくれてありがとう!」「小さいのに偉いぞ!」としんのすけを称賛していた大人たちが「お前がクレヨンを落としたせいで!」「ユウマが勝手に母親を助けたせいで!」と罵詈雑言を飛ばし始めても、しんのすけに変化はありません。
このシーンで大人たちに罵詈雑言を浴びせられたユウマに対して
「オラも母ちゃん助けた。ユウマくんもお母さん見つかってよかったね」
って言えるしんのすけがかっこいいんですよほんと。
その後、しんのすけは雨に濡れて消えかけているぶりぶりざえもんと再会します。(ぶりぶりざえもんは別行動してた)
「ぶりぶりざえもんも消えちゃうの?」
と呟くしんのすけに対し、
「ん? 他に誰かいなくなったのか?」
と聞き返すぶりぶりざえもん。
その問いに対して
「……いや、なんでもない」
って返す5歳児本当にかっこよくないですか?
ぶりぶりざえもんには他の仲間が消えたことを知らせない気遣いに見てるこっちが泣きそうですよ。
そしてぶりぶりざえもんが消えたあと、天を仰いでぐっと涙をこらえるしんのすけ。
見てるこっちはもう泣いてますよ。
ぶりぶりざえもんの消滅により、泣くよりも考えるよりも先に走り出したしんのすけは歌いながら町全体を使って巨大なぶりぶりざえもんを描き出します。
残った仲間はしんのすけが1番最初に描いたブリーフだけ。
そんなブリーフとの別れももう間近。
しんのすけの行動が敵も味方もまとめて動かし、ついに奇跡が起こりかけたその時、巨大なぶりぶりざえもんを描いていた線が途切れてしまいます。
ブリーフは「私を伸ばして線にしてください」と告げます。
ブリーフに対してしんのすけはここでようやく
「オラはもう、誰ともお別れしたくないゾ!」
と本心をさらけ出します。
ニセななこが消えて、大人たちに罵詈雑言を浴びせられて、ぶりぶりざえもんが消えて。
それでもしんのすけはいつも通りだった。
いつも通りで居続けた。
最後の最後でしんのすけの本心がわかることで、今までのしんのすけがどれだけ他人に心配させないように動いていたかがわかります。
唯一しんのすけが零した本心を聞いていた相手が最初に仲間になったブリーフというのもいいですね。
その後、ブリーフとの別れも乗り越えて日常に戻るわけです。
もう1度観たい。
そのくらい面白い作品でした。
何が良いって退屈なシーンが無かった。
大人たちが絵にされる。
しんのすけが助けにいく。
大人たちがしんのすけに感謝する。
仲間との別れ。
町がピンチになる。
さっきまで感謝していた大人たちに罵詈雑言を飛ばされる。
再び仲間との別れ。
大人たちが味方になる。
最後にまた仲間との別れ。
事件解決。
盛り上がるシーン、下がるシーンの波が激しいんですよね。今回。
だから見ていて退屈がない。
他にも色々と語りたいことはあるのですが、流石に長くなるので無理。
ぶりぶりざえもんやユウマ君、カスカベ防衛隊や紅さそり隊の話もしたかった。
なにより姫がかわいい。
絶賛上映中ですので皆さんも是非。
映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者
久々の更新となりました。
コロナの影響と言っても違和感がない期間更新が滞っていたようで我ながら驚愕。
さて、今回は映画クレヨンしんちゃんの感想となります。
ネタバレもあります。注意。
クレヨンしんちゃんの映画を観に行ったのは久々……いや、初めてかもしれません。
そんな私が今年観に行った最大の理由は京極尚彦監督の名前に釣られたという点が大きいですね。私はプリズムの煌めきに脳を焼かれた人間なので。
「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」の感想はただ一言、ここ数年で一番面白かった。
VR空間に絵を描くマサオくんのシーンから始まったり、しんのすけがYoutuberの話をしていたり、授業がタブレットだったりかなり現代的になっていて驚きました。情報収集のためにSNSを活用していたりね。
敵サイドにも味方サイドにも映画オリジナルキャラが多いのに、邪魔なキャラが居ないのがとても良かったです。
今までだったら敵サイドとして出てきたキャラクターはしんのすけ達との戦闘が描かれ、消化されていきます。
でも今回は最初から最後まで王宮にいるだけで一切しんのすけ達と関わらない敵サイドのキャラクターが数人いるなど、存在しているけれど関わって来ない感が世界観を上手く広げていました。
そんな面白かった今作なのですが、今回は私が特に良かったと思う3点についてお話ししましょう。
・姫が可愛い
・真ヒロイン・ニセななこ
・しんのすけの心情
まずは姫の可愛さから。
姫とは今回の敵が守ろうとしている国《ラクガキングダム》の姫です。
捕らわれそうになっても国の未来のため1人で走り出すアクティブさ。
大人のおっさん1人をぶん投げるパワフルさ。
冒頭部分から中盤の間は捕らわれているので中々登場しませんが、中盤以降もう1人の映画オリジナルキャラユウマ君と一緒に、しんのすけを探すため地上に降りてくるので出番が増えます。
この姫がとにかくかわいい。
表情がかわいい。
ムッとしていても、笑っていても、かわいい。
動きもかわいい。
特に終盤歌いながら塀にラクガキをするシーンの姫は動きも表情もかわいいが過ぎる。
今回1番可愛かった姫、そんな姫を差し置いて今作のヒロインとして存在しているのがしんのすけが描いたななこおねいさんの絵が実体化した、ニセななこです。
ニセななこは「しんちゃん、すきよ」しか喋りませんし、本物のななことは似ても似つかぬ顔をしています。そんなニセななこがどうしてヒロインかというと、
めちゃくちゃやさしい
めちゃくちゃかっこいい
めちゃくちゃかわいい
に尽きます。
始めは、描いたしんのすけもこんなのななこおねいさんではないと逃げまどいますが、身体を張ってしんのすけを助けたり、先に段差を登ってしんのすけ達を引っ張ったり、ニセななこが居なければ超えられなかった壁が沢山ありました。
表情もほとんど変わりませんが、しんのすけに木の実を貰った際には笑顔を見せます。
そんなニセななこの最大の見せ場はやはり最期のシーンでしょう。
しんのすけが描いて、実体化した仲間たちはもともと絵なので水に塗れると溶けて消えてしまいます。この設定があるだけでもう色々予想してしまうでしょう。
物語終盤、最終決戦の最中に雨が降り始めます。
屋上に駆けだしていくしんのすけ、追いかけようとするも雨に濡れれば消えてしまうため屋根のある場所から進めないニセななこ。
そんな中、敵の罠によって窮地に陥るしんのすけ。
その姿を見たニセななこは考えるよりも先に走りだしていた。
ここの、ニセななこが走り出すシーンも予想出来るんですよ。絶対助けに行くんだろうなって。
なんなら予告映像で見たなこのシーンって。
予想通りの展開なのにこんなに感動できるのかって感じですよここに関しては。
溶けながらも、溶けた自分の身体を投げてしんのすけを助けるシーンは本当にクレしん映画史に残る名シーン。
そして、しんのすけの心情。
前述のとおりしんのすけの目の前でニセななこは消えてしまいました。
助けてくれたお礼も伝えられないまま。
その後、しんのすけは涙一つ流さずに戦いを続けます。
先ほどまで「助けてくれてありがとう!」「小さいのに偉いぞ!」としんのすけを称賛していた大人たちが「お前がクレヨンを落としたせいで!」「ユウマが勝手に母親を助けたせいで!」と罵詈雑言を飛ばし始めても、しんのすけに変化はありません。
このシーンで大人たちに罵詈雑言を浴びせられたユウマに対して
「オラも母ちゃん助けた。ユウマくんもお母さん見つかってよかったね」
って言えるしんのすけがかっこいいんですよほんと。
その後、しんのすけは雨に濡れて消えかけているぶりぶりざえもんと再会します。(ぶりぶりざえもんは別行動してた)
「ぶりぶりざえもんも消えちゃうの?」
と呟くしんのすけに対し、
「ん? 他に誰かいなくなったのか?」
と聞き返すぶりぶりざえもん。
その問いに対して
「……いや、なんでもない」
って返す5歳児本当にかっこよくないですか?
ぶりぶりざえもんには他の仲間が消えたことを知らせない気遣いに見てるこっちが泣きそうですよ。
そしてぶりぶりざえもんが消えたあと、天を仰いでぐっと涙をこらえるしんのすけ。
見てるこっちはもう泣いてますよ。
ぶりぶりざえもんの消滅により、泣くよりも考えるよりも先に走り出したしんのすけは歌いながら町全体を使って巨大なぶりぶりざえもんを描き出します。
残った仲間はしんのすけが1番最初に描いたブリーフだけ。
そんなブリーフとの別れももう間近。
しんのすけの行動が敵も味方もまとめて動かし、ついに奇跡が起こりかけたその時、巨大なぶりぶりざえもんを描いていた線が途切れてしまいます。
ブリーフは「私を伸ばして線にしてください」と告げます。
ブリーフに対してしんのすけはここでようやく
「オラはもう、誰ともお別れしたくないゾ!」
と本心をさらけ出します。
ニセななこが消えて、大人たちに罵詈雑言を浴びせられて、ぶりぶりざえもんが消えて。
それでもしんのすけはいつも通りだった。
いつも通りで居続けた。
最後の最後でしんのすけの本心がわかることで、今までのしんのすけがどれだけ他人に心配させないように動いていたかがわかります。
唯一しんのすけが零した本心を聞いていた相手が最初に仲間になったブリーフというのもいいですね。
その後、ブリーフとの別れも乗り越えて日常に戻るわけです。
もう1度観たい。
そのくらい面白い作品でした。
何が良いって退屈なシーンが無かった。
大人たちが絵にされる。
しんのすけが助けにいく。
大人たちがしんのすけに感謝する。
仲間との別れ。
町がピンチになる。
さっきまで感謝していた大人たちに罵詈雑言を飛ばされる。
再び仲間との別れ。
大人たちが味方になる。
最後にまた仲間との別れ。
事件解決。
盛り上がるシーン、下がるシーンの波が激しいんですよね。今回。
だから見ていて退屈がない。
他にも色々と語りたいことはあるのですが、流石に長くなるので無理。
ぶりぶりざえもんやユウマ君、カスカベ防衛隊や紅さそり隊の話もしたかった。
なにより姫がかわいい。
絶賛上映中ですので皆さんも是非。